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公開日:2026.9.30
法改正パートタイム・有期雇用労働者に関するルール改正について ――令和8年10月1日施行の改正ポイントを解説
弁護士法人PROの弁護士加田千捺です。
令和8年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります。
今回の改正では、パートタイム・有期雇用労働法施行規則、同一労働同一賃金ガイドライン及び雇用管理指針が見直され、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善に向けた取組が強化されます。
本コラムでは、今回の改正の概要と、企業が確認しておくべき対応について解説します。
1.パートタイム・有期雇用労働法とは
パートタイム・有期雇用労働法は、「短時間労働者」及び「有期雇用労働者」について、適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進等を図るための法律です。
ここでいう「短時間労働者」とは、 1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者をいいます(同法2条1項)。
また、「有期雇用労働者」とは、 期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいいます(同法2条2項)。
実務上は、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員などの名称が用いられることがありますが、法律の適用対象となるかどうかは、名称ではなく、所定労働時間や契約期間の定めの有無などによって判断されます。
2.同一労働同一賃金の基本的な考え方
パートタイム・有期雇用労働法では、通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との間の待遇差について、
均衡待遇及び均等待遇のルールが定められています。
このルールは、いわゆる「同一労働同一賃金」と呼ばれる考え方に関わるものです。
まず、同法8条では、基本給、賞与その他の待遇について、当該待遇の性質及び目的に照らして、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとされています。
また、同法9条では、通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者について、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由とする差別的取扱いが禁止されています。
つまり、「同一労働同一賃金」は、単に正社員とパートタイム・有期雇用労働者の待遇をすべて同一にするという意味ではありません。
待遇ごとに、その性質や目的を確認した上で、職務内容、責任の程度、配置変更の範囲、その他の事情に照らし、待遇差が不合理といえるかどうかを判断することになります。
3.改正ポイント1 労働条件明示事項の追加
1つ目の改正ポイントは、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際の労働条件明示事項が追加されることです。
パートタイム・有期雇用労働法6条1項では、 事業主は、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたとき、速やかに、一定の労働条件を文書の交付等により明示しなければならないとされています。
これまでも、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際には、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「相談窓口」の4つの事項を明示する必要がありました。
今回の改正により、これらに加えて、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を明示することが必要となります。
これは、パートタイム・有期雇用労働者が、通常の労働者との待遇差の内容や理由について、 事業主に説明を求めることができることを、雇入れ時に明らかにするものです。
なお、この明示義務は、労働契約の更新時にも問題となります。
4.改正ポイント2 「同一労働同一賃金ガイドライン」の見直し
2つ目の改正ポイントは、「同一労働同一賃金ガイドライン」が見直されることです。
「同一労働同一賃金ガイドライン」には、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間で待遇差がある場合に、 どのような待遇差が不合理と認められるかについて、原則となる考え方や具体例が示されています。
今回の改正では、裁判例等を踏まえ、賞与、退職手当、各種手当(無事故手当、家族手当、住宅手当等)、福利厚生(福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞等)、教育訓練に関する記載が追加又は見直されました。
例えば、
賞与や退職手当については、労務の対価の後払い、功労報償、労働意欲の向上など、複数の目的を有する場合があります。
これらの目的が、パートタイム・有期雇用労働者にも妥当するにもかかわらず、支給が通常の労働者との職務内容等の相違に応じた均衡のとれた内容となっていない場合には、不合理な待遇差と判断される可能性があります。
5.改正ポイント3 雇用管理指針の見直し
3つ目の改正ポイントは、雇用管理指針が見直されることです。
雇用管理指針は、 パートタイム・有期雇用労働者について、事業主が講ずべき雇用管理上の措置等を示すものです。
今回の見直しでは、主に下記について、事業主に求められる対応が整理されています。
①待遇差について説明を求められた場合の対応
②賃金決定における公正な評価
③通常の労働者への転換推進措置
④就業規則の作成・変更時の手続
⑤福利厚生施設の利用に関する便宜の供与
⑥労使の話合いの促進や情報公表 等
本コラムでは、企業実務上特に確認しておきたい点として、①待遇差について説明を求められた場合の対応、②賃金決定における公正な評価、③通常の労働者への転換推進措置を取り上げます。
①待遇差について説明を求められた場合の対応
パートタイム・有期雇用労働法14条2項では、事業主は、パートタイム・有期雇用労働者から求めがあったときは、 通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由、並びに待遇を決定するに当たって考慮した事項について説明しなければならないとされています。
今回の見直しでは、この待遇差の説明について、「資料を活用し、口頭により説明する方法」又は「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」によることとされました。
また、資料を活用して口頭で説明する場合には、説明に活用した資料等を交付することが望ましいとされています。
②賃金決定における公正な評価
パートタイム・有期雇用労働者の賃金を決定するに当たっては、職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験、その他の就業実態に関する事項を公正に評価し、昇給に反映するなど、 公正な評価に基づいて賃金を決定することが望ましいとされています。
③通常の労働者への転換推進措置
通常の労働者への転換推進措置については、パートタイム・有期雇用労働法13条に基づき、 正社員募集時の周知、社内公募時の応募機会の付与、転換試験制度の整備その他の措置のいずれかを講じる必要があります。
今回の見直しでは、正社員等への転換のための制度を設けるとともに、複数の措置を講ずることが望ましいことが示されています。
また、労働契約更新時の面談等を利用して対象者の意向を確認し、その意向に配慮することも示されています。
今回の改正を踏まえ、企業としては、ま ず、パートタイム・有期雇用労働者用の労働条件通知書や雇用契約書を確認する必要があります。
令和8年10月1日以降は、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を明示する必要があるため、現在使用している書式にその記載があるかを確認すべきです。
次に、正社員等の通常の労働者と、パートタイム・有期雇用労働者との間の待遇差について、 パートタイム・有期雇用労働法及び同一労働同一賃金ガイドラインの考え方に沿って整理する必要があります。
基本給、賞与、退職手当、各種手当、福利厚生、休暇、休職制度などについて取扱いに差がある場合には、その待遇の性質や目的、職務内容、責任の程度、配置変更の範囲等の違いを踏まえ、待遇差の内容や理由を説明できる状態にしておくことが重要です。
単に「正社員の人材確保や定着を図るため」「有期雇用だから対象外とする」といった抽象的な説明では足りず、待遇ごとの性質や目的に即した具体的な説明が求められます。
また、パートタイム・有期雇用労働者から説明を求められた場合に備え、 待遇差の内容や理由、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明できる資料を準備しておくことも重要です。
加えて、通常の労働者への転換推進措置についても、制度の有無や内容、実際の運用状況を確認し、 パートタイム・有期雇用労働者に対して適切に周知・運用できているかを点検しておくことが望ましいといえます。
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